
ケータリング事業で最も大きなリスクは、悪い口コミではありません。自分の所有物ではない建物に入り、持ち込んだ機材で調理し、会ったこともない180人に料理を提供する、その4時間です。ケータリング事業保険は、その時間に生じるリスクに備えるためにあります。
ケータリングで最も多い保険金請求は、借りた会場の物損です。Food Liability Insurance Programが公表した数値によると、1件あたりの損害額は平均で約$4,300に上ります。サイドボードを1台焦がすだけで、結婚式1件分の利益がすべて消えてしまう金額です。
要点:ケータリング事業保険の費用は、一般賠償責任保険だけなら年間$500〜$1,700、スタッフとバンがあり、バーサービスも提供する会社なら年間$3,000〜$8,000です。会場側が確認するのは、保険加入証明書に$1M/$2Mの補償限度額と3つの特約が記載されているかどうかです。
2026年のケータリング事業保険の費用
公表されている見積額は、大きく2つの価格帯に分かれます。バン1台で営業する事業者が払う金額と、スタッフを雇う会社が払う金額です。
| 保険の種類 | 一般的な保険料 | 補償の対象 |
|---|---|---|
| 一般賠償責任保険 | $42〜$141/月 | ゲストのけが、会場の物損 |
| 事業主総合保険 | $80〜$99/月 | 賠償責任補償と財産補償のセット |
| 労災補償保険 | 約$90/月 | スタッフのけが、休業中の賃金 |
| 酒類提供者賠償責任保険 | 約$65/月 | 酔ったゲストが引き起こす損害 |
| 機材保険/インランド・マリン保険 | $25〜$75/月 | 輸送中の保温器、オーブン、リネン類 |
目安は2つあります。酒類を扱わず、スタッフも雇わずに料理の配達のみを行う個人事業者なら、通常は年間$600〜$1,500です。従業員と車両があり、バーサービスまで提供するフルサービスの会社なら、年間$3,000〜$8,000になります。
公表される金額にこれほど差がある理由
同じ業種なのに、あるサイトには月額$42、別のサイトには$252と書かれています。どちらも間違いというわけではありません。
Insureonが公表しているのは、ケータリング業の顧客が実際に契約した保険料の中央値です。顧客の多くが零細事業者のため、低めの数値になります。一方、MoneyGeekは従業員2人の標準的な会社をモデルにケータリング保険の見積額を算出しているため、高めの数値になります。
一方は実際に支払われた金額を測り、もう一方は一定のリスク条件に対して妥当とされる保険料を算出しています。この表も含め、公表されているケータリング事業保険の金額はすべて目安として捉え、確定した保険料とは考えないでください。米国中小企業庁の事業保険ガイドでも、同様の考え方が示されています。
保険料を実際に左右する要素
- 酒類の提供。酒類提供者賠償責任保険と一般賠償責任保険の両方の保険料を押し上げます。ケータリング事業では、保険料を左右する最大の要因です。
- 給与総額。労災補償保険の保険料は、業種分類コードに対応する料率に給与総額を掛け、過去の事故実績に基づく修正率で調整して算出します。ケータリング業はほとんどの州でコード9079に分類されますが、California州では2024年にケータリング専用のコード9082が追加されました。
- 補償限度額。限度額が$1M/$2Mの保険と、コンベンションセンターが求める$5Mの保険では、保険料が大きく異なります。
- 保険金請求歴。5年間保険金請求がなければ、費用をかけずに保険料を抑えられます。次に影響するのが、配送時の走行距離です。
- 補償の一括契約。事業主総合保険でまとめて契約すると、同じ補償を個別に契約するより通常10〜15%安くなります。
ケータリング事業に本当に必要な保険
ケータリング事業者が実際に加入する保険は、1つの商品だけで完結せず、複数の補償を組み合わせたものです。主に6つの補償が事業を支えます。
ご自身の事業に照らし合わせながら確認しましょう。結婚式・イベントのケータリングが抱えるリスクは、企業向けの食事提供、出張シェフ、作り置き食の宅配事業、キッチンカー、移動式バー、自宅での製パン・製菓事業とは異なります。
一般賠償責任保険
会場に入れるかどうかを左右するのが、この保険です。一般賠償責任保険は、第三者のけがや物損を補償します。たとえば、配線につまずいたゲストのけがや、保温器で依頼主のサイドボードを焦がしてしまった場合の損害です。
契約に生産物・完成作業危険の補償が含まれているか、必ず確認してください。この条項は、すでに提供した料理にも適用され、食中毒などの健康被害に対する請求が補償されるかどうかを左右します。
倒れた保温器で焦げた宴会場の寄せ木張りの床とリネン。一般賠償責任保険で補償される会場の物損の例
生産物賠償責任保険
提供する商品はすべて食品ですから、この補償は欠かせません。生産物賠償責任保険は、食品に起因する健康被害、アレルギー反応、汚染を補償します。CDCによると、食品に起因する健康被害は米国で年間およそ4,800万人に発生しています。
小規模事業者向けの保険では、多くの場合、この補償は一般賠償責任保険に含まれます。ただし含まれない契約もあるため、書面で確認しましょう。料理を盛り合わせたグレージングテーブルも、配送するギフトバスケットも含め、提供するあらゆる食品にリスクが伴います。
事業用自動車保険
個人向け自動車保険では業務利用が補償対象外となり、その免責条項は実際に適用されます。披露宴会場へ向かう途中で追突事故を起こすと、個人向けの契約では保険金の支払いを拒否される可能性があります。
ほとんどの州では、事業者が所有する車両に事業用自動車保険への加入を義務付けています。借用車・非所有車補償を付けると、スタッフが自家用車を運転する場合まで補償を広げられます。
酒類提供者賠償責任保険
酒類を注いで提供するだけでも、リスクは発生します。この保険は、バーで酒類を提供しすぎたゲストが引き起こしたけがや物損を補償します。一般賠償責任保険では、ほぼ必ず補償対象外になります。
酒類の提供が依頼内容に含まれる場合、一般賠償責任保険だけが記載された証明書では受け付けない会場が多くあります。酒類に関するリスクの保険料は、早い段階で予算に入れましょう。目安は月額約$65で、バーやラウンジの営業ではさらに高くなります。酒類製造業者向けの許可はTTBが発行します。
庭園の大型テントで開かれる披露宴の移動式バーと、こぼれたカクテル。酒類提供者賠償責任保険が補償する、酒類提供に伴うリスクの例
労災補償保険
人を雇った時点で、加入するかどうかは自由に選べなくなります。米国労働省が州ごとの制度を案内しており、ほとんどの州では従業員を1人でも雇うと加入が必要です。
厨房ではやけど、包丁によるけが、重い物を持ち上げる際のけがが起きます。出張先での仕事では、階段や搬入口のリスクも加わります。スタッフを業務委託扱いにしても、この義務がなくなるわけではありません。
湯気の立つホテルパンを持ち、スロープを上ってイベントの調理準備用テントへ運ぶ調理スタッフ。労災補償保険が対象とする、荷物を持ち上げる作業のリスク
機材保険とインランド・マリン保険
事業用財産保険は、自社の所在地にある機材を補償します。インランド・マリン保険は、その機材をバンに積んだときも、会場内に運び込んだときも、借りたゴーストキッチンに一晩置いたときも補償します。
機材は再調達価額で保険の明細に記載しましょう。オーブン、保温器、ポータブル冷蔵設備を合わせると、あっという間に大きな金額になります。特に共同調理施設の利用契約が関わる場合は注意が必要です。
事業主総合保険と、そこに含まれない補償
事業主総合保険(BOP)は、一般賠償責任保険と事業用財産保険を組み合わせたもので、小規模なケータリング事業者なら月額およそ$80〜$99です。効率よく基本の補償を揃えられますが、これだけでケータリング事業保険が万全になるわけではありません。
自動車、従業員、酒類提供者の賠償責任、事業所外の機材は、この保険の対象外です。見積もりを依頼するときは、実際の事業全体に必要な補償で金額を出してもらいましょう。
会場が求める条件:保険加入証明書の確認ポイント
米国では、ケータリング事業者の一般賠償責任保険への加入は、通常、州法で義務付けられていません。一方、自動車賠償責任保険や労災補償保険は、加入が義務となることがよくあります。
それ以外はすべて、契約上の要件です。イベント会場、プランナー、法人顧客が定める条件で、法律より厳しいこともあります。会場の条件を満たさなければ、仕事を進められません。加入の証明にはACORD 25の保険加入証明書を使います。
証明書保有者と追加被保険者は別のもの
この2つは同じ意味で使われがちですが、同じものではありません。
証明書保有者は、保険契約が存在することを示す証明書を受け取るだけです。一方、追加被保険者はその契約によって実際に保護され、その人や会社に対する請求も契約の補償限度額に含まれます。ホテルが追加被保険者としての指定を求めているのに、保険ブローカーが証明書保有者として記載すると、厳格な会場では搬入を止められます。
保険加入証明書を確認するため、荷物用エレベーターの前で機材を積んだケータリング用台車を止める会場運営責任者
搬入を認めてもらうための証明書チェックリスト
- 会場のウェブサイトに載っている屋号ではなく、正確な法人の正式名称を記載すること。
- 契約条件を満たす賠償責任補償。けがと物損については、通常1事故あたり$1,000,000/保険期間中の総額$2,000,000が求められます。ホテルやリゾート施設、大学、スタジアムの飲食売店では、$2M〜$5Mを求められることもよくあります。
- 会場を追加被保険者に指定する特約。プランナーも対象にするよう求められることがよくあります。
- 相手側の保険より先に自社の保険が適用されるよう、優先適用・他保険への分担請求なしという条件を明記すること。
- 大規模な会場では標準となっている、代位求償権の放棄。
- パーティーの開催時間だけでなく、設営、サービス提供、撤収まで含む保険期間。
- 酒類を扱う場合は、酒類提供者賠償責任保険を別途記載すること。
- 保険会社が発行を認めない「解約の30日前に通知」という文言を約束しないこと。
証明書は契約を締結した日に依頼しましょう。当日中に発行してもらうのは一般的ですが、イベント前日の午後9時に依頼するのは適切ではありません。
営業許可は保険とは別に必要
営業許可は、事業を営むための行政の許可です。一方、保険は、現場への立ち入りを認める前に顧客が求めるものです。「ケータリングの営業許可」という言葉の裏には、いくつもの手続きが隠れています。
- 事業登録と雇用主識別番号(EIN)の取得
- 州または郡の保健当局が発行するケータリング営業許可
- 認可された業務用厨房または共同調理施設。ゴーストキッチンを開業する人なら誰もが気づくように、自宅のキッチンが条件を満たすことはほとんどありません
- FDA食品衛生規範に基づく、スタッフの食品取扱者資格
- 売上税の徴収許可
- サービスを提供する各地域で必要となる、ケータリング事業者向けの酒類提供許可
ケータリングのビュッフェ台で鶏肉の温度を測る食品衛生検査官。営業許可に関わる衛生検査の様子
許認可と保険は結び付いています。認可されていない自宅のキッチンで有料イベント用の料理を作るなど、許可条件を外れて営業すると、保険会社が保険金請求を認めない根拠になります。また、ケータリング保険の見積もりは、必要な許可をすべて取得していることが前提です。医療施設の食事提供や高齢者向け住宅の食事提供の契約では、顧客独自の監査も加わります。
年間契約と単発イベント保険、どちらを選ぶ?
単発イベント向けの保険は手頃で、会場名を記載した証明書も1日以内に発行してもらえます。年間3〜4件のイベントであれば、合理的な選択です。
ただし、開催回数が増えると、すぐに割に合わなくなります。1日限りの保険では、バン、スタッフ、機材まで補償されることはほとんどありません。そして、次の予約までの間もリスクはなくなりません。
毎月ケータリングを行うなら、年間契約のケータリング事業保険のほうが、イベント1件あたりの費用を抑えられます。税務申告の面でも利点があります。IRSは、保険料を通常の事業経費として扱っています。
搬入を可能にするのは保険。受注につなげるのは写真。
会場の推奨業者リストに載るケータリング事業者は、どこも同じように事業保険の加入証明書を備えています。それは競争に参加するための条件であって、他社との差別化にはなりません。
必要な条件を満たした2社の明暗を分けるのは、提案書です。ケータリングの提案では、依頼主が自分たちのテーブルに並ぶ様子を思い描ける写真が受注を決めます。ケータリング事業保険を完璧に整えても、添える写真が厨房の蛍光灯の下でスマホ撮影した6枚だけでは、競争に負けてしまいます。
見積もりをもう1件取るより役立つものもあります。
- 撮るべき写真を整理するためのケータリング料理写真の撮影ガイド
- 発注者が求める水準を知るための商業用の料理写真撮影
- トレーに盛った料理の細部まで見せるためのメニュー写真の撮影ガイド
- ケータリングでの活用事例。FoodShot AIなら、スマホで撮った写真を約2分で、そのままメニューに使える2K画像に変換できます。料金は月額$15からです
- マーケティング計画、ケータリングのマーケティングガイド、販促キャンペーンのアイデア、写真撮影プラン
よくある質問
1人で営むケータリング事業の保険料はいくら?
公表されている中央値では、酒類を扱わず、スタッフも雇っていない1人のケータリング事業者の場合、一般賠償責任保険は月額約$42、年間約$500です。従業員2人の会社をモデルにした見積額は、月額$89〜$141程度になります。
ケータリング保険への加入は法律で義務付けられている?
一般賠償責任保険は、通常、法律上の義務ではありません。一方、従業員を雇ったり、事業用車両を持ったりすると、労災補償保険や事業用自動車保険は一般に加入が必要になります。会場との契約では、法律より手厚い補償が求められ、それを守る義務が生じます。
会場はケータリング事業者にどの程度の補償限度額を求める?
一般的な最低基準は、1事故あたり$1,000,000、保険期間中の総額$2,000,000です。ホテル、コンベンションセンター、自治体の施設では$2M〜$5Mを求められることが多く、プランナーも追加被保険者に指定するよう求められることがあります。
一般賠償責任保険は食中毒の損害賠償請求も補償する?
生産物・完成作業危険の補償を通じて対象になることが多いものの、必ずとは限りません。食品に起因する健康被害やアレルギー反応への請求が、契約の補償限度額内で対象になることを書面で確認しましょう。保険ブローカーが最もよく指摘する補償の抜け漏れが、この部分です。
依頼主が酒類を用意する場合も酒類提供者賠償責任保険は必要?
必要になることがよくあります。多くの契約では、酒類を販売したかどうかではなく、給仕や提供を行ったかどうかが判断基準になります。スタッフが酒を注ぐのであれば、そのリスクが契約上どう定義されているかを確認してください。NAICの消費者向け情報ページから、お住まいの州の監督当局を探せます。
単発イベント保険で年間契約のケータリング保険を代用できる?
年間3〜4件のイベントなら可能です。それ以上なら、年間契約のほうが1件あたりの費用を抑えられます。また、1日限りの証明書とは異なり、仕事と仕事の間もバン、スタッフ、機材を守れます。高級レストランの顧客は、賠償責任補償が途切れず続いていることを求めます。
ケータリング事業保険は、損益計算書の中で最も地味な項目かもしれません。それでも、たった一晩のトラブルを乗り越えて事業を続けられるかどうかを左右します。1つの保険だけでなく、事業全体に必要な補償の費用を見積もりましょう。
