
飲食店の原価計算ツールは、食材の仕入れ値を、その料理に付けるべき販売価格に置き換えてくれます。ところが無料ツールの多くは、飲食店の利益をじわじわと削る要素を見落としています。下処理ロス、加熱による目減り、ピッチャーに残って捨てるミルク、そして料理を詰めて出す容器です。この記事では、6ステップの計算シート、2分で作れるGoogle スプレッドシートの原価計算表、そして最初から最後まで計算した3品(チーズバーガー、ラテ、10人分のケータリングトレー)を紹介します。
概要:一皿あたりの原価とは、提供する分量で計算した各食材の行(歩留まり調整済み)の合計です。販売価格は、その一皿あたりの原価を目標原価率で割って求めます。歩留まりのステップを省いていたら、今回のケータリングトレーは$85で売られ、原価率は35.3%(本来の目標は30%)になっていたはずです。
飲食店の原価計算表を使う6つのステップ
- 提供する分量を量る。多くの計算表がつまずくのは、分量を目分量で決めているところです。計量することが、ポーションコントロール(分量管理)の第一歩になります。
- 請求書の金額を単価に直す。牛ひき肉の10ポンド入りケースが$56なら、オンスあたり35セントです。
- 歩留まりで割る。歩留まりとは、仕入れた量のうち実際に皿に載る割合のことです。USDA Food Buying Guide(米国農務省の食品購入ガイド)によると、下処理前のロメインレタスで使える葉は64%です。
- 提供量を掛ける。これで食材ごとの原価の行が出ます。
- 見えにくい項目を足す。量りきれないほど少量の油、塩、ソース、付け合わせは、一律の「Qファクター」(少量の食材をまとめて見込む額)でまかないます。テイクアウトやケータリングでは、さらに容器・包材のコストもかかります。
- 価格を計算する。一皿あたりの原価 ÷ 目標原価率(%) = 販売価格。すでに付けている価格を検証するなら、一皿あたりの原価 ÷ メニュー価格 × 100 = 原価率 です。
理論面は原価の計算式ガイドで解説しています。
無料の原価計算表テンプレート(Google スプレッドシート)
メールアドレスの登録もデモの申し込みも不要です。空のGoogle スプレッドシートを開き、次のように入力してください:
A1 Ingredient | B1 Pack price | C1 Pack size | D1 Unit | E1 Yield % | F1 Portion | G1 Unit price | H1 Line total
G2 =IFERROR(B2/C2,0)
H2 =IFERROR(G2/E2*F2,0) (select G2:H2 and fill down to row 15)
G17 Plate cost H17 =SUM(H2:H15)
G18 Target food cost % H18 30%
G19 Suggested price H19 =H17/H18
G20 Your menu price H20 (type it)
G21 Actual food cost % H21 =H17/H20
G22 Gross profit H22 =H20-H17
入り数は分量を量るのと同じ単位で入力し(10ポンドのケースなら、オンス単位で160)、歩留まりはパーセントで入力します。タブにはそれぞれレシピ名を付けましょう。「ファイル › ダウンロード」でExcelまたはPDFのコピーを保存すれば、厨房のレシピファイルに綴じておけます。この原価計算表は、レストラン、カフェ、キッチンカー、ゴーストレストラン、ケータリング業者のどれでも同じように使えます。
計算例1:$9.95のチーズバーガー
| 食材 | 仕入れ値 | 歩留まり | 分量 | 項目 |
|---|---|---|---|---|
| 牛ひき肉 80/20 | $5.60/ポンド | 100% | 生で5オンス | $1.75 |
| ブリオッシュバンズ | $6.60(12個入り) | 100% | 1 | 55セント |
| アメリカンチーズ | $28.80(160枚入り) | 100% | 1枚 | 18セント |
| ロメインレタスの葉 | $2.40/ポンド | 64% | ½オンス | 12セント |
| トマト | $2/ポンド | 90%* | 1オンス | 14セント |
| Qファクター:ソース、ピクルス、バター | 一律 | – | – | 25セント |
| レシピ合計 | $2.99 |
目標原価率30%なら、このバーガーには$9.97が必要なので、メニューには$9.95(30.1%)で載せます。*トマトの歩留まりは、芯を取った後の私たちの想定値です。ご自身の店で量ってください。牛肉が100%なのは、パティを生の状態で量り分けるため、加熱による目減りがすでに原価に織り込まれているからです。
生の牛肉パティと、焼いた後の同じパティ。加熱による目減りは、バーガーの原価にすでに含まれている
ここからは、どの原価計算ツールも教えてくれない話です。米国農務省(USDA)の経済調査局(Economic Research Service)は、2026年に牛肉・子牛肉の価格が9.8%上昇すると予測しています(Food Price Outlook)。ケースの仕入れ値が$6.15/ポンドに上がれば、同じバーガーの原価は$3.16、$9.95で売ると原価率は31.8%になります。皿の上は何も変わっていないのに、利益率だけが変わったのです。BLS(米国労働統計局)による牛ひき肉の小売平均価格は$6.92/ポンド(2026年8月)でした。卸業者の見積もりがそれを上回っているなら、電話で確認する価値があります。
計算例2:12オンスのラテ(とオーツミルクの落とし穴)
| 食材 | 仕入れ値 | 歩留まり | 分量 | 項目 |
|---|---|---|---|---|
| エスプレッソ用コーヒー豆 | $11.50/ポンド | 95% | 18g(ダブル) | 48セント |
| 成分無調整牛乳 | $3.90/ガロン | 85% | 8液量オンス | 29セント |
| カップ、フタ、スリーブ | セットあたり18セント | 100% | 1 | 18セント |
| Qファクター:砂糖、マドラー、紙ナプキン | 一律 | – | – | 4セント |
| レシピ合計 | 99セント |
目標原価率22%なら、ラテは$4.50になります。豆の95%は、朝の抽出調整(ダイヤルイン)で使うショットの分、牛乳の85%は、ピッチャーに残って捨てるミルクの分です。どちらも想定値なので、自店で計測してください。牛乳の平均価格は小売でガロンあたり$4.23でした(2026年8月)。カップを計上し忘れると、テイクアウトのラテは原価を18セント少なく見積もることになり、原価率22%で値付けすると82セントも安すぎる価格になります。
落とし穴はPOSの有料オプション(モディファイア)です。オーツミルクは$40で32オンス入りが12本なので、牛乳の行は98セント、ドリンク全体の原価は$1.68に上がります。原価率22%を守ろうとするとラテは$7.64、つまり誰も払わない$3.14の追加料金が必要になります。代わりに守るべきは金額です。牛乳のラテは$3.51の粗利を生むので、$1.68に$3.51を足すと$5.19。オーツミルクへの変更を70セントの追加料金にすれば、利益は目減りしません。オプションの価格は、原価率ではなく一杯あたりの利益で決めましょう。
計算例3:10人分のケータリングトレー
レモンハーブ風味の鶏もも肉、ハーブライス、ロースト野菜、ロールパンをアルミトレーに詰めたもの。ケータリングでは加熱後の料理を重さで取り分けるため、歩留まりの誤りが大きな損失につながります。
| 食材 | 仕入れ値 | 歩留まり | 分量 | 項目 |
|---|---|---|---|---|
| 骨なし鶏もも肉 | $3.20/ポンド | 加熱後75% | 加熱後50オンス | $13.33 |
| ハーブライス(サブレシピ) | 一人前あたり24セント | – | 10 | $2.40 |
| ミックス野菜 | $1.90/ポンド | 下処理後80% | 40オンス | $5.94 |
| ロールパンとバター | 一人あたり30セント | 100% | 10 | $3 |
| Qファクター:マリネ液、油、レモン、ハーブ | 一律 | – | – | $1.80 |
| アルミトレー、フタ、取り分け用スプーン | セットあたり$3.50 | 100% | 1 | $3.50 |
| レシピ合計 | $29.97 |
原価率30%なら、トレーの価格は$100弱です。一人あたり$10とすれば、販促でも打ち出しやすい数字になります(ケータリング集客アイデアも参考にしてください)。
では、歩留まりを入れずに計算してみましょう。鶏肉は生で50オンスあれば足りるものとして($10)、野菜は仕入れたままの量で($4.75)計算すると、トレーの原価は$25.45に見えます。原価率30%で値付けすると$85のトレーになりますが、実際の原価率は35.3%です。同じ料理なのに、利益率が5ポイント消えてしまいます。75%という数字は計画用の目安です。USDAの加熱歩留まりに関する研究では、ローストチキンの歩留まりは65〜84%と幅があるため、試しに一度焼いて重さを量ってください。同じ計算は$400のデリバリー向けトレーにもそのまま使え、ケータリングの売上を伸ばすあらゆる計画の土台にもなります。
試し焼きした鶏もも肉のローストと、取り分けた焼き汁。ケータリングトレーの原価に使う加熱後の歩留まりを出すために重さを量る
一皿あたりの原価と期間原価の違い
原価計算ツールで出せるのは、一皿あたりの原価、つまりレシピどおりに作った場合に料理にかかるはずの原価です。一方、期間原価は実際に使った金額で、棚卸しから計測します:
期間原価率(%) = (期首棚卸高 + 仕入高 − 期末棚卸高) ÷ フード売上高 × 100
ある週の例:期首在庫$8,200に仕入れ$11,400を足し、期末在庫$7,900を引くと、使用額は$11,700です。フード売上$36,000に対して、これは32.5%になります。販売数で加重した一皿あたりの原価率が29.8%なら、差の2.7ポイントは$972。廃棄、盛りすぎ、サービス(無料提供)、盗難、あるいは古いままの価格データで失われた金額です。
多くの経営者は1〜2ポイントの差なら正常とみなし、それ以上開いたら厨房のラインを見て回るきっかけにします。在庫管理ソフトを使えば棚卸しを自動化できますが(飲食店のAIツールのまとめ記事を参照)、クリップボードでも十分です。差が何か月も開いたままなら、オーナーは飲食店コンサルタントやフードコンサルタントに依頼することがよくあります。
原価率はどのくらいを目標にすべき?
| 業態 | 一般的な目標 |
|---|---|
| クイックサービス、ファストカジュアル | 25〜32% |
| カジュアルなフルサービス | 28〜35% |
| ファインダイニング、ステーキハウス | 30〜40% |
これらは目標ではなく、妥当かどうかを確かめる目安として扱ってください。$42のステーキを原価率38%で出せば$26.04、$18のパスタを22%で出せば$14.04が手元に残ります。家賃を払えるのは金額であって、パーセントではありません。キッチンカーやデリバリー専門店には、さらにイベント出店料、アプリの手数料、キッチンの賃料がかかるので、キッチンカーの事業計画、キッチンカーのメニュー、デリバリー専門店のメニュー設計、ウーバーイーツで注文を増やす方法も参考にしてください。
値引きの前や価格改定の前にも、必ず計算してください。秋の販促アイデアでは、施策ごとの利益計算を紹介しています。デジタルメニューボードなら変更のコストは安く済み、新しい価格は、それに合わせて作ったメニューで打ち出すのが最も効果的です(メニューデザイン、売れるメニューの書き方)。
料理の価格が決まってメニューに載ったら、次はその料理を売る写真が必要です。メニューエンジニアリングの解説記事で、どの料理から撮影すべきかを紹介しています。
よくある質問
メニュー一品の原価はどう計算すればいいですか?
各食材を提供する分量で量り、請求書の金額を単価に直し、歩留まりで割り、分量を掛けて合計します。その一皿あたりの原価を販売価格で割り、100を掛ければ原価率が出ます。
原価率30%は適正ですか?
多くのカジュアルなレストランにとっては妥当な中間値です。クイックサービスはこれより低く、ファインダイニングは高くなります。より良い判断基準は、一皿あたりの粗利と、期間原価が一皿あたりの原価から2ポイント以内に収まっているかどうかです。
容器・包材も原価に含めるべきですか?
テイクアウト、デリバリー、ケータリングの商品なら、含めるべきです。カップやフードパック、トレーは料理と一緒にお客様の手に渡るからです。別の項目として管理してもかまいませんが、価格には必ず織り込んでください。
原価に人件費は含まれますか?
含まれません。人件費はプライムコスト(食材費+人件費。日本でいうFLコスト)に入り、経営者は利益を守るため、これを売上の60%未満に抑えるのが一般的です。
原価計算表はどのくらいの頻度で更新すべきですか?
食材の価格が5%以上動いたら、その時点でレシピを計算し直し、シート全体は四半期ごとに見直しましょう。2026年は牛肉に要注意です。
